【Explainer】アメリカの大学の親パレスチナ・デモの背景にあるもの

2024年5月6日
エリア: 北米
抗議のデモは全米に飛び火している[パレスチナ人支援を掲げる抗議活動のキャンプ=2024年5月2日、アメリカ・シアトルのワシントン大学](C)REUTERS/Matt Mills McKnight
この数週間、全米各地の大学でガザへの攻撃に抗議する学生たちのデモが広がっている。抗議者とこれに反対するグループの衝突が起きて警察がデモ隊のキャンプを撤去した大学もあれば、当局側が抗議者の要求に応じた後にキャンプが撤収された大学もあり、依然として抗議行動が続いているところもある。

[ロイター]抗議活動の詳細は以下のとおり。

親パレスチナ派のデモ隊が要求するものは何か

 抗議活動が起きている大学で学生たちが求めてきたのは、ガザにおける恒久的な停戦、アメリカのイスラエルに対する軍事支援の終結、軍需産業や戦争で利益を得ている企業への投資を大学が止めること、抗議活動を理由に処分されたり解雇されたりした学生や教職員の処分撤回だ。

 学生たちは、10月7 日のハマスによるイスラエル攻撃に対する報復としてイスラエルが続けているガザ攻撃に抗議している。イスラエルは10月7日のハマスの攻撃で1200人が殺害されたとしており、ガザの保健当局はイスラエルの攻撃で34000人以上が犠牲になったと発表している。

パレスチナを擁護して抗議活動をしているのは誰か

 親パレスチナの抗議活動は、ユダヤ教、イスラム教の双方を含む学生、教職員、外部の活動家を引き寄せている。これらを組織しているグループには、「パレスチナ正義のための学生(Students for Justice in Palestine)」や「平和を求めるユダヤの声(Jewish Voice for Peace)」などがある。

 抗議活動の拠点では、さまざまな討議集会や、宗教を超えた祈りの集い、音楽集会などが行われている。主催者たちは、対立する親イスラエルのデモに対する暴力を否定してきた。それでも、ユダヤ系学生の中には、キャンパスで身の危険を感じたりユダヤ人排斥の掛け声で不安になったりすると語る者もいる。

 市当局や大学当局の中には、抗議活動を大学に引き入れたり、学内で組織しているのは部外者だとの見方もある。たとえば、テキサス大学オースティン校は、4月29日にキャンパスで逮捕された79人のうち、45人が大学に何の関係もない者だったと公表した。

抗議活動に対抗するのは誰か

 抗議活動に対抗しているのは、イスラエル系アメリカ人やシオニスト・グループ、その仲間の学生やユダヤ系アメリカ人コミュニティに率いられたグループだ。

 カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)で、イスラエル擁護団体である「イスラエル系アメリカ人会議(Israeli American Council)」が組織した対抗集会には数百人が参加した。あるユダヤ系活動家の学生は、親パレスチナ派デモ隊によってキャンパスの一角に立ち入ることを阻まれた自身の様子を動画で公表した。

 カリフォルニア大学バークレー校では5月1日、シオニストグループ「イスラエルを支援する学生たち(Students Supporting Israel)」と親パレスチナの抗議者との間で乱闘が起きた。

 アリゾナ州立大学では4月27日、親パレスチナ抗議活動に反対する学生たちが警察を支援し、デモ隊のキャンプを解体した。ミシシッピ大学では5月2日、星条旗を振ったりドナルド・トランプ前大統領を支持する横断幕を掲げたりする何百人もの学生が、親パレスチナ派を攻撃するスローガンを大合唱した。

当局はどう反応したか

 大学によっては、デモ参加者を検挙し、キャンプや座り込みを撤収させるために地元の法執行機関に通報したところもある。抗議活動を黙認したり、話し合いの末に抗議を終わらせたりした大学もある。……

カテゴリ: 社会 政治
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