トランプ大統領の発言とアクション(7月24日~7月31日):言うなれば「MAGA輸出」の本格化、新関税率のベースに「最適関税論」?
EUとの合意には不明点も
英北部スコットランドの南西側に位置するターンベリーは、アイリッシュ海とアラン島を一望できる風光明媚な土地として知られる。ドナルド・トランプ氏は7月27日、一族が経営する壮麗なゴルフリゾート「トランプ・ターンベリー」にて、ウルズラ・フォンデアライエン欧州委員長と関税協議で合意した。
ホワイトハウスが発表したファクトシートによれば、相互関税は日本と同じく15%。1962年通商拡大法232条に基づき発動された自動車・部品のほか、今後個別で発動される予定の半導体や医薬品も、15%に設定された。ただし、232条を根拠として課された鉄鋼・アルミ、8月1日から発動となる銅については、日本と同じく50%で維持。その他、トランプ氏の任期中を指す2028年末までに米国産のエネルギーを7500億ドル購入する。対米投資は、エネルギー購入と同じく2028年末までに、EU(欧州連合)企業が従来から行ってきた対米投資の年間1000億ドルに加えて6000億ドルと明記された。
その他、EUはネットワーク使用料を課さない方針を明確化したという。EUでは、通信事業者を中心に米IT大手企業(アマゾン・ドットコムやネットフリックスなど)に対して、通信インフラ利用に応じた金銭的負担を求める構想「Fair Share」を検討していたが、事実上棚上げされた格好だ。
EUの資料によれば、今回のトランプ政権との合意では「関税ゼロ枠=ゼロ・フォー・ゼロ」が設定された。戦略的品目として、全ての航空機・部品、特定の化学品、特定の後発医薬品、半導体装置、一部の農産物、天然資源、重要素材が挙げられ、今後は品目が追加される可能性もあるという。また、EU高官によれば、法的拘束力を持たない共同声明を8月1日までに作成、その後、法的拘束力をもつ文書の作成に取り組む方針だ。
相互関税の調査要件には、「付加価値税(VAT)などを含む不公平、差別的な租税措置」が含まれていたが、今回の合意ではVATの他、デジタル・サービス税(DST)は盛り込まれなかった。ただし、ハワード・ラトニック商務長官は7月29日、米経済金融局CNBCとのインタビューで「今後、米テクノロジー企業への攻撃となるDSTなどを協議する」と発言。今回の合意は、EU側が土俵際で切り抜けたものの、DSTについては先送りされただけのようだ。また、トランプ氏は映画に対する関税を主張していたが、EUによる「視聴覚メディアサービス指令(AVMSD)」を通じた、映画製作への投資を強制する措置について、現時点では言及されていない。
日本とEU、合意内容の違いは?
日本とEUの合意内容を比較すると、
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