韓国の李在明(イ・ジェミョン)大統領が予想以上に好調な滑り出しを見せている。6月3日の大統領選では得票率が5割に届かなかったため「李在明嫌い」の根強さが語られたのだが、支持率は6割台前半で安定している。しかも保守野党「国民の力」の岩盤支持層とされる慶尚北道地域や高齢者層でも、支持が不支持よりはるかに多い。もともとは国民の力を支持していた保守派の政治評論家や論客にも高く評価する人が珍しくないし、官僚にも「意外にいい」と話す人が多いのだ。就任直後の「ハネムーン期間」とは言うものの、政治的な分断が米国並みに進んだとされる近年の韓国では驚きの現象である。
大統領選の得票率を上回る支持
まずは支持率を見てみたい。7月18日発表の韓国ギャラップの世論調査では、支持64%、不支持23%だった。同社は民主化以降の歴代大統領について四半期ごとにまとめた支持率を出している。それを見ると政権発足直後の支持率は、年代順に盧泰愚(ノ・テウ)29%、金泳三(キム・ヨンサム)と金大中(キム・デジュン)71%、盧武鉉(ノ・ムヒョン)60%、李明博(イ・ミョンバク)52%、朴槿恵(パク・クネ)42%、文在寅(ムン・ジェイン)81%、尹錫悦(ユン・ソンニョル)50%である1。
文在寅の支持率が特に高いのは、韓国で初めて罷免された大統領である朴槿恵の後任だったためだろう。大きなショックを受けた国民をまとめ、政治を立て直してほしいという期待感の表れだったと考えられる。だが実際には、文政権は「積弊清算」というスローガンを掲げて徹底的な保守派たたきを実行し、それまで徐々に進んでいた政治理念に基づく社会の分極化をより深刻なものとしてしまった2。分断深刻化の結果が、大統領選での得票率(48.6%)とほぼ同じという就任直後の尹錫悦の支持率に結びついたと言える。尹政権下でも分断の解消はまったく進まなかったから、李在明の支持率も大統領選での得票率(49.4%)と同程度であっておかしくなかった。にもかかわらず6割を超えているというのは、やはり高いと言わざるをえない。
保守野党の牙城である南東部・慶尚北道地域での支持は49%、不支持は33%だった。大統領選では国民の力候補だった金文洙(キム・ムンス)が67.2%を得票し、李在明は24.4%にとどまった地域だ。同様に保守的な有権者が多い70歳以上では支持53%、不支持25%だった。出口調査では、この年代は6割以上の人が金文洙に投票していた。
韓国ギャラップは7月に実施した3回の世論調査を集計し、年代・性別に細かく分類した結果も公表している。これを見ると、大統領選で保守系候補に流れた若年男性も李在明支持に回っている。18~29歳男性は支持41%、不支持36%、30代男性は支持62%、不支持27%だ。出口調査では、李在明に投票したのはそれぞれ24%、37.9%に過ぎなかった。
就任式からそのまま野党指導部と昼食会
なぜ好評なのか。国民の力で改革派に属する元国会議員に問いかけると、
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