いまや10人に1人が通う通信制高校の「光」と「闇」

執筆者:宮田純也 2025年11月11日
タグ: 日本
エリア: アジア
私立通信制高校やサポート校は営利企業の参入も可能であり、教育産業としても成長している (C)mapo/stock.adobe.com
不登校の増加を背景に、自宅学習を基本とする通信制高校で学ぶ生徒数は過去最高を記録している。2024年度の通信制高校の生徒数は全体の9.1%、約10人に1人の計算だ。授業の内容は独自性が高く多種多様だが、教員免許を持たない者が指導に当たる、先生1人で生徒100人に面接指導を行うなどの問題も無視できない。

 少子化によって多くの高校が定員割れに苦しむ中、通信制高校は2015年以降、生徒数を伸ばし続ける稀有な状況にある。高校には全日制・定時制・通信制の3課程があるが、このうち通信制の生徒数のみが2015年から連続して増加し、2024年度には29万87人と過去最高を記録した。特に私立通信制高校の伸びが顕著で、2024年度には22万9754人に達し、前年度比で2万2217人の増加となった。結果として、高校全体に占める通信制高校の生徒が占める割合も上昇し、2024年度には9.1%となった。

 2023年度の通信制高校は289校(公立78校、私立211校)であったが、2024年度には303校(公立79校、私立224校)へと増加し、前年度比で14校増加した。さらに2025年度中に公立4校、私立15校の新設が予定されている。

 新設校の多くは全日制と通信制を併置する形態で、これまで私立の通信制高校が存在しなかった徳島県、群馬県においても新たに認可校が開校する予定であり、全国的な需要の高まりが確認できる。

 背景には、不登校の高止まりがある。2023年度には小中学校で約35万人が不登校となり、11年連続で過去最多を更新した。2018年2月に行われた「定時制・通信制高等学校における教育の質の確保のための調査研究1」によれば、広域通信制高校の在籍者のうち、小中学校や前籍校で不登校を経験した生徒の割合は66.7%に達している。つまり、従来の学校教育になじめなかった子どもの増加に伴い、その受け皿として通信制高校の存在感が強まっているのである。

この記事だけをYahoo!ニュースで読む>>
カテゴリ: カルチャー
フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
執筆者プロフィール
宮田純也(みやたなおや) 未来の先生フォーラム代表理事、宇都宮海星学園理事、横浜市立大学特任准教授。1991年生まれ。早稲田大学高等学院、早稲田大学教育学部教育学科卒業、同大学大学院教育学研究科修了(教育学修士)。大手広告会社などを経て独立後、日本最大級の教育イベント「未来の先生フォーラム」と「株式会社未来の学校教育」の創設、約2億7000万円の奨学金の創設、通信制高校の設立に関わるなど、プロデューサーとして教育に関する企画や新規事業を実施。2023年には「未来の先生フォーラム」と「株式会社未来の学校教育」を朝日新聞グループに参画させ、子会社社長を務めた。現在はこれまでの実績をもとにして、さまざまな立場や役割で教育改革を推進している。単著に『教育ビジネス-子育て世代から専門家まで楽しめる教育の教養-』(クロスメディア・パブリッシング)、編著に『SCHOOL SHIFT』・『SCHOOL SHIFT2』(明治図書出版)など多数。
  • 24時間
  • 1週間
  • f
back to top