トランプ大統領の再登場後、さまざまな常識が一変した。
世界中に対して関税砲を撃ちまくり自国主義を振りかざしたかと思うと、ESG投資を忌み嫌い、パリ協定からの脱退を決めた。また、金融緩和をなかなかしないFRB(米連邦準備制度理事会)には常に嫌味を言い続けてきた。低所得者層から取り上げた資金を富裕層に使う措置を取ることになるOBBB法案(ひとつの美しくて大きい法案)を通過させ、世界中に対して関税を調整する見返りに米国への巨額の投資を約束させた。
天真爛漫を通り過ぎてあまりにも破天荒なトランプ政権の政策に、周りは一様に呆れ顔でも、一方で自国だけは得をしようと必死に交渉も進めている有様。
では米国経済はどうなったか。筆者はこれまで、どこかで米国がダメになるのではないか、と固唾を飲んで見てきたが、一向に景気がスローダウンすることもなく、NYダウは史上最高値を更新してきたのが実際だ。
2026年を見据えても、折からのインフレによる価格上昇圧力、AI(人工知能)を中心とする買い材料、ヘッジファンドなどシャドーバンク(銀行規制の枠外にある「影の銀行」)にある豊富な資金を中心とする過剰流動性などが下支えをする結果、株価は堅調に推移することが想定される。経済統計が少しずつ悪化傾向を示すと考えられるも、仮にそうなればFRBの金融緩和は継続して行われることになりサポートするであろう。11月には中間選挙を控えるトランプ政権としては、なんとしても景気や株価を支えようとするであろうし、そのための規制緩和策は次々提供されるのではないかと想像する。さすれば、金融市場は2025年と同様、強目に推移するというのがメインシナリオとなるのではないだろうか、と見ている。
しかし、常にリスクはある。地政学的リスクの顕在化など、想定したところで対応しようがないリスクを除いて三つ指摘したい。
関税政策のツケと消費減退の可能性
第一に、米国経済の腰折れリスクである。米国は関税政策を世界中に対して打ってきた。それは他国に対するネガティブな影響にとどまらず、自国にも影響をもたらすことになる。
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