迷走を繰り返し膠着状態に陥った税制論議は、内閣改造で最後は小泉首相の決断次第となった。首相の思惑通りの展開だが、自ら唱えた「あるべき税制」は未だ見えていない。 小泉改造内閣の顔ぶれは、政府税制調査会(首相の諮問機関)関係者に少なからぬショックを与えたはずだ。不良債権問題の対応策で、金融機関への公的資金注入を巡って柳澤伯夫前金融相と真っ向から対立してきた竹中平蔵・経済財政相が、事前の予想を裏切って金融相を兼務することになった。小泉純一郎首相は政治家である柳澤氏を更迭してまで、公的資金注入に積極的な民間人の竹中氏に金融行政も任せ、経済政策運営上の強力な権限を与えた。このことは、実は小泉首相が提唱する税制の抜本改革の行方にも大きな影響を与えるとみられ、税制改正に携わる者の心中は穏やかでない。

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