ロシアの2012年は、下院選不正投票に反発する抗議行動の高揚で一転して予測不透明になった。プーチン首相が3月4日の大統領選で当選しても、選挙不正疑惑がつきまとい、政権への反発が強まるのは必至だ。政権側は旧来のバラマキと抑圧で対処しようとしているが、社会の地殻変動が起ころうとしている。プーチン時代は「終わりの始まり」を迎えたとみるべきだろう。
「盗人と詐欺師の党」
昨年12月10日と24日のモスクワでの選挙不正抗議集会は、「プーチンは去れ」「プーチンのいないロシアを」などとシュプレヒコールが上がり、寒波の中、推定5万-10万人が参加した。若者が中心で、左右両派の野党勢力も結集。下院選直後のデモで拘束された人気ブロガー、アレクセイ・ナバリヌィの「統一ロシアは盗人と詐欺師の党」が中心的スローガンとなった。抗議行動はフェイスブックなどを通して全土の100カ所以上に波及。民主化運動の「ロシアの冬」となった。 1つ注目されたのは、当代最高の人気作家、ボリス・アクーニンが参加し、登壇したことだ。彼は他の政党党首らに大統領選への不出馬を要請し、大統領選での投票ボイコットを呼び掛けた。アクーニンは三島由紀夫らの翻訳を手がけた日本文学専門家で、歴史ミステリー部門でミリオンセラーを連発。ペンネームのアクーニンは「悪人」から取っている。政治行動を避けていた彼が反プーチンに回ったことは、流れが変わったことを示した。 この後、アクーニンのブログにハッカー攻撃が行なわれ、ブログが炎上。グリゴリー・チハルチシビリという本名が掲載され、「グルジアへ帰れ」と書き込まれた。
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