ブッシュは“イラク破綻”の責任をどう取るのか

執筆者:田中明彦 2007年1月号
エリア: 北米 アジア

 十一月に行なわれたアメリカの中間選挙の前までは、ブッシュ大統領は、イラクにおいて「われわれは勝利しつつある」と宣言していた。十二月五日、国防長官としての承認をうける上院聴聞会の席で、ロバート・ゲイツ氏は「われわれは今イラクで勝利しつつあると思いますか」との問いに対して、「ノーであります」(No, sir)と答えた。 イラクではアメリカは勝利できない、というのが今やコンセンサス(合意)である。コンセンサスが常に正しいわけではないし、ゲイツ新国防長官もアメリカが「負けている」わけではないと付け加えている。しかし、新任の国防長官がちょっと前までは大統領が言っていたことと百八十度違う、「勝利していない」という前提で今後の政策を語るということの意味は大きい。

カテゴリ: 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
田中明彦(たなかあきひこ) 1954年、埼玉県生まれ。東京大学教養学部卒業。マサチューセッツ工科大学大学院博士課程修了(Ph.D. 政治学)。東京大学東洋文化研究所教授、東京大学副学長、国際協力機構(JICA)理事長、政策研究大学院大学学長、三極委員会アジア太平洋地域議長などを経て、2022年4月より再び国際協力機構(JICA)理事長に就任。著書に『新しい「中世」―21世紀の世界システム』(サントリー学芸賞受賞)、『ワード・ポリティクス―グローバリゼーションの中の日本外交』(読売・吉野作造賞)、『アジアのなかの日本』、『ポスト・クライシスの世界―新多極時代を動かすパワー原理』など。
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