深層レポート 日本の政治
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「背水の陣」を福田に押しつけた自民党派閥政治
「一寸先は闇」と言われる政界でも、今回の安倍晋三首相の退陣劇ほど、永田町の住人を心底驚かせた事件はない。 二日前に行なった所信表明演説で「全身全霊をかけて内閣総理大臣の職責を果たしていくことをお誓い申し上げる」と大見得を切ったばかりの首相が突然「辞める」と言い出したのである。「驚いた」と言うより「あきれた」と言う方が正確かもしれない。与野党を問わず、多くの議員が発した第一声は「うそだろ」だった。 そこには、後世の歴史家が振り返って「宜なるかな」と得心するような激しい与党内の権力闘争も、野党との攻防もなかった。退陣劇の舞台にはたった一人、「闘う政治家」という看板も、一国の指導者としての責任も投げ捨てた五十三歳の首相官邸の主が悄然と涙目でたたずんでいるだけだった。

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