インテリジェンス・ナウ

イラン日本人学生人質事件 解放させたのは誰だったのか

執筆者:春名幹男 2008年9月号
タグ: イラン CIA 日本
エリア: 中東

 不可解な誘拐事件だった。 イランで昨年十月誘拐され、今年六月、八カ月ぶりに解放された横浜国立大四年、中村聡志さんの事件である。 日本の報道では、事件を起こした武装集団は「シャハバフシュ」という麻薬密輸組織で、中村さんの身柄と引き替えに、当局に拘束された仲間数人の釈放を要求したと伝えられていた。 中村さん解放にあたって、イラン政府側は犯人側からの要求には「一切応じず、金銭も支払っていない」と説明した。だが、武装集団が無条件で要求を取り下げることがあるのだろうか。 また、解放後首都テヘランで記者会見した中村さんは、報道陣の質問が解放の経緯に及ぶと、「内容に触れる部分は答えを差し控えたい」と拒否し、拘束中の生活についても「詳細なコメントは控えたい」と口をつぐんだ。

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執筆者プロフィール
春名幹男(はるなみきお) 1946年京都市生れ。国際アナリスト、NPO法人インテリジェンス研究所理事。大阪外国語大学(現大阪大学)ドイツ語学科卒。共同通信社に入社し、大阪社会部、本社外信部、ニューヨーク支局、ワシントン支局を経て93年ワシントン支局長。2004年特別編集委員。07年退社。名古屋大学大学院教授、早稲田大学客員教授を歴任。95年ボーン・上田記念国際記者賞、04年日本記者クラブ賞受賞。著書に『核地政学入門』(日刊工業新聞社)、『ヒバクシャ・イン・USA』(岩波新書)、『スクリュー音が消えた』(新潮社)、『秘密のファイル』(新潮文庫)、『米中冷戦と日本』(PHP)、『仮面の日米同盟』(文春新書)などがある。
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