クオ・ヴァディス きみはどこへいくのか?

米大統領選と江戸城大奥

執筆者:徳岡孝夫 2000年12月号
エリア: 北米

 一度だけアメリカ大統領選挙の投票現場を見たことがある。場所はニューヨーク州北部の大学町で、ケネディvs.ニクソンのときだから古い話である。 小学校(だったと思う)の廊下の隅に、電話交換台を少し小さくしたような投票機があり、半円形に張り出したカーテンが、左右に開いている。投票する人が入ると、その背後でカーテンが自動的に閉じる。すなわち秘密投票である。 投票機には、小さいレバーが横二列に並んでいる。一つ一つのレバーの上に大統領・副大統領、連邦上院議員、下院議員から州上下両院議員、町の郵政長官までの役職名が書いてある。二列のレバーの左端には民主、共和とある。民主党または共和党のどちらかのレバーを右に捻ると、その列のレバーが全部、一斉に右に曲がる。カーテンが開く。一字も書く必要ない。投票結果は投票機内に記録される。

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執筆者プロフィール
徳岡孝夫(とくおかたかお) 1930年大阪府生れ。京都大学文学部卒。毎日新聞社に入り、大阪本社社会部、サンデー毎日、英文毎日記者を務める。ベトナム戦争中には東南アジア特派員。1985年、学芸部編集委員を最後に退社、フリーに。主著に『五衰の人―三島由紀夫私記―』(第10回新潮学芸賞受賞)、『妻の肖像』『「民主主義」を疑え!』。訳書に、A・トフラー『第三の波』、D・キーン『日本文学史』など。86年に菊池寛賞受賞。
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