原書(“Empire”)で五百ページ近く、邦訳で六百ページに迫ろうとする大作が静かなブームを呼んでいる。タイトルは、ズバリ、『帝国』(以文社)である。恐ろしく思弁的で、しかし妙にリアリティに富む硬派の本が、人々を惹きつけるのはどうしてなのか。 言うまでもなく、多くの人々が、唯一の超大国アメリカに「帝国」のイメージを重ね合わせているからだろう。 でも「帝国」とは、アメリカそのものではない。共著者のアントニオ・ネグリとマイケル・ハートの言う「帝国」は、特定の主権的な領域国家ではないのだ。それは、固定した領土や国家的な主権とは無縁であり、むしろそれを超えた脱領域的で中心をもたないグローバルな「指令」のネットワークを指しているのである。
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