「対中警戒」「日本待望」が滲み出たロシアの震災外交

執筆者:遠藤良介 2011年4月19日
エリア: ヨーロッパ
3月14日、モスクワの日本大使館で、震災犠牲者に献花するロシアのラブロフ外相 (C)時事
3月14日、モスクワの日本大使館で、震災犠牲者に献花するロシアのラブロフ外相 (C)時事

[モスクワ発] モスクワの日本大使館に花などを持ち寄り記帳したロシア人は、震災から1カ月で約3000人にのぼった。各地の総領事館にも同様に多くの市民が足を運んだほか、義援金を目的とした各種のイベントも数多く行なわれている。今回の震災で、実に多くのロシア人が心からの哀悼と連帯の気持ちを示したのは印象的だった。 「日本をどう支援するか」の議論は連日、新聞やラジオも賑わした。ある大衆紙が北方領土を「同情の印として引き渡すべきだ」とまで書いたのは例外的だが、「震災孤児を養子として受け入れるべきだ」「被災者を極東やシベリアに移住させてはどうか」といった意見は政治家や識者によっても大まじめに語られた。まだ被災者数や孤児数が満足に判明していない時点でのことである。  今回の東日本大震災を受けて、ロシアは直接の人道支援はもとより、東シベリアの巨大ガス田開発に日本の参加を呼びかけるなど、急速な対日接近の動きを見せた。周到な「震災外交」が狙うのは、北方領土問題での日本の態度を軟化させ、資源大国の地位を強化することにほかならない。そこには、潜在的な対中国警戒と表裏一体の「日本待望論」が見え隠れしている。

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