【ブックハンティング】現代国際政治と二重写し 一神教に呑み込まれたローマ

 塩野七生の『チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷』(新潮文庫)を読んだのは高校生の頃だから、この著者と(一方的に)邂逅してから四半世紀を経る。多くの読者も長年のつき合いであろう。その塩野の超大作『ローマ人の物語』も、いよいよ終盤にさしかかっている。 本書『キリストの勝利――ローマ人の物語XIV』の主な登場人物は三人である。大帝と称されたコンスタンティヌスの死後、例によって凄惨な権力闘争に勝ち抜いて帝位を継いだコンスタンティウス、その後継者で、しばしば「背教者」と呼ばれるユリアヌス、そして、キリスト教の国教化に寄与したミラノ司教アンブロシウスである。

カテゴリ: カルチャー
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執筆者プロフィール
村田晃嗣(むらたこうじ) 1964年、神戸市生まれ。同志社大学法学部卒業。ジョージ・ワシントン大学M.Phil。神戸大学大学院法学研究科博士課程修了。博士(政治学)。広島大学総合科学部助教授、同志社大学法学部助教授などを経て、2005年より同教授。2013年から2016年まで同志社大学学長を務める。著書に『大統領の挫折――カーター政権の在韓米軍撤退政策』(アメリカ学会清水博賞、サントリー学芸賞受賞)、『戦後日本外交史』(共著、吉田茂賞受賞)、『トランプ vs バイデン――「冷たい内戦」と「危機の20年」の狭間』、『978-4623093946政治学者のシネマ・エッセイ』など。
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