米軍変革ドクトリン「EBO」が過信される危険

執筆者:杉田弘毅 2006年9月号
タグ: ドイツ 日本
エリア: 北米

イラク戦争はEBOで形の上では勝利した。だが、「血を流さない戦争」には根本的矛盾が付きまとう。[ワシントン発]ラムズフェルド米国防長官が掲げる「米軍変革」が試行錯誤しながら進んでいる。同時テロ(九・一一)、アフガニスタン攻撃、イラク戦争などを経て世界と米国の安全保障環境が変わる中、世界最強の軍隊を二十一世紀に見合った形にしようとの動きだ。一方で米軍は、広がる戦線、膨らむ犠牲で、入隊者の定員割れを生み、採用基準を下げたり、入隊一時金を支払って兵員を確保する有り様。志願制の米軍は一般社会と乖離し、後述するように作戦面の変化と相俟って戦争の敷居を否応なく下げてしまう恐れがある。

フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
執筆者プロフィール
杉田弘毅(すぎたひろき) 共同通信社特別編集委員。1957年生まれ。一橋大学法学部を卒業後、共同通信社に入社。テヘラン支局長、ワシントン特派員、ワシントン支局長、編集委員室長、論説委員長などを経て現職。安倍ジャーナリスト・フェローシップ選考委員、東京-北京フォーラム実行委員、明治大学特任教授なども務める。多彩な言論活動で国際報道の質を高めてきたとして、2021年度日本記者クラブ賞を受賞。2021年、国際新聞編集者協会理事に就任。著書に『検証 非核の選択』(岩波書店)、『アメリカはなぜ変われるのか』(ちくま新書)、『入門 トランプ政権』(共同通信社)、『「ポスト・グローバル時代」の地政学』(新潮選書)、『アメリカの制裁外交』(岩波新書)など。
  • 24時間
  • 1週間
  • f
back to top