EUは加盟国間の利害調整でとてつもない交渉力を培ってきた。いまそれが、国際的なルール作りでの競争力と化し――。 今年一月十日。まだ正月気分が抜け切らない東京・霞が関の官庁街を、ブリュッセル発の一本のニュースが熱風となって駆け抜けた。「欧州連合(EU)は、地球温暖化の原因となるガスの排出量を、二〇二〇年までに一九九〇年比で二〇%以上削減する」 EUの執行機関である欧州委員会が発表した「欧州エネルギー戦略」。その長大な文書の中には、温暖化ガス削減の新しい数値目標が、高らかに宣言されていた。「悔しいが、緒戦ではEUに先を越された」。日本の経済産業省の幹部は、そう告白する。温暖化防止をめぐる先進国間の交渉で、まずEUが先頭に躍り出たのは事実である。
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