タクシン前タイ首相(五七)を昭和初期の日本に登場させてみよう。 彼は莫大な資産で作り上げた巨大与党を武器に、それまでのルールや権威を半ば無視した政治を推し進める。だがその手法は却って経済を活性化し国力を増すことにつながり、外交的得点を挙げるばかりか貧しい民衆からの支持も絶大。軍部の威信は低下し、既存勢力は苦々しい思いを募らせる。そこで、軍上層が“大御心”を錦の御旗に反撃に転じた。 こう考えると昨年九月の国軍によるタクシン追放クーデターの背景は納得できそうだが、その後の展開は、前代未聞の事態の連続である。
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