クオ・ヴァディス きみはどこへいくのか?
「ボート・ピープル」から40年
密航船に乗って船と共に沈んだ乗客の正確な数は、リビアの海岸を出たときすでに不明だった。
通信社の速報には「約900人を超すアフリカ難民を積んだ密航船が、リビアの海岸を出てシチリアに向かう途中に転覆、沈没し……」となっているが、出港地では「そんなものじゃない。1000人はいたはずだ」という声が出ている。とにかく何百人の単位で数えられる女子供を含む難民が、地中海に呑まれて死に、または行方不明になった。
武器を持つ勢力に迫害され、国民を食わせてくれる政府はなく、隣の部族には襲われる。彼らは命からがら逃げる決心をしたのだろう。
住み慣れた土地を捨て、なけなしのカネで船賃を払って、ヨーロッパという別世界へ逃げようとしたのだ。命懸けである。
船を世話してくれるブローカー、またその人を紹介してくれるブローカーのブローカーがいたのだろう。終戦直後のヤミ市時代、秩序を失った日本の社会も、ブローカーによって回っていた。
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