テロリストの誕生(18)「いよいよ戦争だ!」

執筆者:国末憲人 2015年8月29日
エリア: ヨーロッパ 中東

 パリ北東ダマルタン=アン=ゴエルの印刷工場「CTD」では、駆けつけた対テロ特殊部隊「国家憲兵隊治安介入部隊」(GIGN)による包囲が、1月9日朝から続いていた。

 この後で起きるユダヤ教徒向けスーパーの立てこもり事件と違って、こちらは、「人質事件」とは言い難かった。確かに、印刷工場の中にはクアシ兄弟のほか、印刷会社のグラフィックデザイナーであるリリアン・ルペールが閉じ込められていた。しかし、リリアンは経営者のミシェル・カタラーノの指示を受けて、クアシ兄弟が入ってくる前に身を隠していたのである。兄弟は、そんな人物が室内にいるなどと思ってもいない。人質を取っているつもりは全くなかった。

カテゴリ: 政治 社会 IT・メディア
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執筆者プロフィール
国末憲人(くにすえのりと) 東京大学先端科学技術研究センター特任教授 1963年岡山県生まれ。85年大阪大学卒業。87年パリ第2大学新聞研究所を中退し朝日新聞社に入社。パリ支局長、論説委員、GLOBE編集長、朝日新聞ヨーロッパ総局長などを歴任した。2024年1月より現職。著書に『ロシア・ウクライナ戦争 近景と遠景』(岩波書店)、『ポピュリズム化する世界』(プレジデント社)、『自爆テロリストの正体』『サルコジ』『ミシュラン 三つ星と世界戦略』(いずれも新潮社)、『イラク戦争の深淵』『ポピュリズムに蝕まれるフランス』『巨大「実験国家」EUは生き残れるのか?』(いずれも草思社)、『ユネスコ「無形文化遺産」』(平凡社)、『テロリストの誕生 イスラム過激派テロの虚像と実像』(草思社)など多数。
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