インテリジェンス・ナウ

拡大するアル・カエダの「路線対立」有力創設メンバーも「暴力」を否定

執筆者:春名幹男 2009年1月号

 バラク・オバマ氏が勝利した米大統領選挙。その直後に、国際テロ組織アル・カエダと系列の組織が全くニュアンスの違う声明を出した。 アル・カエダのナンバー2、アイマン・ザワヒリ容疑者がインターネット上のビデオで発表した声明は、人種差別むき出しの発言。オバマ氏を白人に奉仕する黒人を意味する「ハウス・ニグロ」と非難するひどい内容だった。また、イラクからの米軍の撤退とアフガニスタンへの米軍増派を柱とするオバマ氏の新しい対テロ戦略も「失敗する運命にある」と決めつけた。 だが、イラクのアル・カエダ系武装組織「イラク・イスラム国」の指導者アブオマル・バグダディ師は、オバマ氏の当選は米軍撤退を求める自分たちの「勝利」と評価したのだ。この中で彼はあらためて米軍のイラク撤退を求めたが、同時に、撤退と引き替えに「停戦」も提案、取引の余地を残した。

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執筆者プロフィール
春名幹男(はるなみきお) 1946年京都市生れ。国際アナリスト、NPO法人インテリジェンス研究所理事。大阪外国語大学(現大阪大学)ドイツ語学科卒。共同通信社に入社し、大阪社会部、本社外信部、ニューヨーク支局、ワシントン支局を経て93年ワシントン支局長。2004年特別編集委員。07年退社。名古屋大学大学院教授、早稲田大学客員教授を歴任。95年ボーン・上田記念国際記者賞、04年日本記者クラブ賞受賞。著書に『核地政学入門』(日刊工業新聞社)、『ヒバクシャ・イン・USA』(岩波新書)、『スクリュー音が消えた』(新潮社)、『秘密のファイル』(新潮文庫)、『米中冷戦と日本』(PHP)、『仮面の日米同盟』(文春新書)などがある。
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