リーダーインタビュー・シリーズ (7)

【トップランナー】株式会社オリエンタルランド 代表取締役社長兼COO 吉田謙次

東京ディズニーリゾート開園40周年を来年に控え、限界や完成形のない「夢、感動、喜び、やすらぎ」の提供を続ける。

執筆者:フォーサイト編集部 2022年12月1日
タグ: マネジメント
【経歴】よしだ・けんじ 1960年神奈川県生まれ。84年法政大学経済学部を卒業後、オリエンタルランド入社。同社の子会社・株式会社アールシー・ジャパンへの出向を経験し、経理部長、フード本部長、第8テーマポート推進本部長などを歴任。2021年6月代表取締役社長兼COOに就任。

 新型コロナウイルスの流行により、多くの業界が影響を受けた。東京ディズニーランドや東京ディズニーシーを擁するオリエンタルランドも、多大な影響を受けた企業の一つだ。制限は一部解除されたものの予断を許さない状況が続いている。同社の吉田謙次代表取締役社長兼COOに話を聞いた。

Q.業界の現状についてお聞かせください

 2020年に発生した新型コロナウイルス感染症の影響によりさまざまな制限が生じ、現在も感染対策などが求められています。ただ、リモートでのコミュニケーションが進むにつれ、さまざまな価値も生まれており、その一つにリアルな世界の良さが際立ってきたようにも感じます。今後、中長期的な視点では、人口減少や物価高騰、気候変動などの影響が年々大きくなるでしょう。

 当社としても、類を見ない感染症の世界的流行が続き、入園者数や運営方法など多くの制限がある中でのパーク運営が続き、難しい舵取りを迫られました。そのような状況でも、従業員一人ひとりが創意工夫をしながら安全・安心なパーク運営をしつつ、ゲストに最大限のハピネスを提供できるよう全力で対応してきました。

 また、コロナ禍だからこそ得られた知見も活かし、中期経営計画を策定しました。今後は、従来から認識していた少子高齢化による将来的な顧客人口や労働人口の減少などの課題に加え、新型コロナウイルス感染症の流行による長期間の事業停止というリスクが顕在化したことで、それらに柔軟に対応することが必要であると考えています。

Q.その中でオリエンタルランドグループの戦略は

 2022年4月に2024中期経営計画を発表しました。今年度からの3年間を、「新型コロナウイルス感染症流行による影響からの回復と将来に向けたチャレンジを実行する期間」と位置づけ、ゲストの体験価値向上を最優先に、同時に財務数値の回復を目指します。パークの1日当たりの入園者数の上限を感染症流行前よりも下げることで、年間を通じて待ち時間を一定レベルに抑え、多様化するゲストニーズに応えることのできる選択肢の提供などを通して、ゲストの体験価値と収益向上を目指します。もちろん、リゾートの魅力向上のための大規模開発やコンテンツの導入などは継続していきます。

 コロナ禍前までは、より多くのゲストをお迎えできるようなパーク運営を行ってきましたが、コロナ禍で入園者数を大幅に制限して運営する中、待ち時間が減り、ゆったりとお食事やお買い物を楽しんでいただくなど、ゲストのみなさまの満足度が高まっていることを確認できました。もちろん、1日当たりの入園者数の上限を引き下げるのは、混雑感が強まる週末や祝日、連休などです。集客余地のある平日などは各種施策や変動価格制の活用によって底上げを図り、平準化を推進していきます。

 これらのテーマパーク事業戦略に加え、ホテル事業戦略や人事戦略などを含むこの中期経営計画を推進し、環境変化にも柔軟に対応できるような体制を図るとともに、当社グループが掲げる2030 年に目指す姿を実現します。

Q.2030年に目指す姿とは

 今年4月、当社グループが長期的にどのような方向性で成長を目指すのか、存在意義そのものを見つめなおし、持続可能な社会への貢献と長期持続的な成長に向けて2030年に目指す姿「あなたと社会に、もっとハピネスを。」を設定しました。

「東京ディズニーリゾートのみならず、社会を含めた多くの人々のためにハピネスを創造し続ける」「持続可能な社会の実現に向けて役割を果たすことで、社会から望まれる企業であり続ける」「従業員が心から誇れる企業であり続ける」という3点を掲げ、事業の持続的な発展と8つのESGマテリアリティ(重要課題)への取り組みを推進しています。この8つのESGのマテリアリティは事業活動と一体になって取り組むべきですが、中でも「従業員の幸福」と「子どものハピネス」は、当社グループならではです。

「従業員の幸福」においては、働くことによって得られる喜びや達成感(仕事のやりがい)の創出と、働きやすい社内環境や制度の整備・向上を目指す取り組みを行います。また、未来を担う子どもたちの夢や心を育むために、事業活動や社会貢献活動を通じて、「子どものハピネス」に取り組んでいきたいと考えています。

Q.最後にメッセージをお願いします

 当社グループは、“自由でみずみずしい発想”を原動力に、「夢、感動、喜び、やすらぎ」を提供することを不変の企業使命としており、また「テーマパークは永遠に完成しない」と掲げるように、私たちの挑戦に限界や完成形はありません。

 コロナ禍であっても、中長期的にパークの価値を向上させるために必要な成長投資は継続してきました。この11月には東京ディズニーシーの新ナイトタイムエンターテイメント「ビリーヴ!~シー・オブ・ドリームス~」の公演がスタートし、多くのみなさまからご好評をいただいています。

 来年は東京ディズニーリゾート開園40周年を迎えるため、アニバーサリーイベントを開催し、続く2024年春には東京ディズニーシーの新テーマポート「ファンタジースプリングス」とテーマパーク一体型ホテルがオープンする予定です。開発面積約14万平方メートルの広大な敷地に、「アナと雪の女王」などディズニー映画をテーマにした3つのエリアを設け、4つのアトラクションやレストラン、ホテルなどを新設するかつてない大規模な開発です。これらは、当社グループを輝かしい未来へ導いてくれる希望の星であり、みなさまに自信を持ってお届けできるエリアになると確信しています。さらに、2027年には東京ディズニーランド「スペース・マウンテン」とその周辺環境を一新する計画が進んでいます。

 世界中でこの東京ディズニーリゾートだけでしか体験できない価値創出を通じ、社会や価値観が移り変わろうとも、「夢、感動、喜び、やすらぎ」を提供し続け、多くの笑顔を生み出す企業で在り続けられるよう、挑戦を重ねていきます。これからの更なる成長・進化に、どうぞご期待ください。

カテゴリ: 経済・ビジネス
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