Weekly北朝鮮『労働新聞』 (77)

新型弾道ミサイル引き渡し式典で「金正恩の娘」が約80日ぶりに登場(2024年8月4日~8月10日)

執筆者:礒﨑敦仁 2024年8月13日
タグ: 北朝鮮 金正恩
エリア: アジア
金正恩国務委員長の娘は、写真の右端にわずかに映り込む程度の露出だった(『労働新聞』HPより)
新型弾道ミサイルの引き渡し記念式が行われ、金正恩の娘も雛壇に並んだ。娘の登場は今年5月15日以来となるが、『労働新聞』の報道で「お子さま」への言及はなかった。洪水被害については、ロシアのプーチン大統領から人道支援の申し出があったことが紹介される一方、中国からの見舞いのメッセージは確認されていない。【『労働新聞』注目記事を毎週解読】
 

 8月5日付は、金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が新型弾道ミサイルの引き渡し記念式に出席して演説したことを報じた。朝鮮労働党第8回大会と党中央軍事委員会拡大会議の決定により生産された250台のミサイル発射台が公開されるなかで、「われわれが向き合っている米国は、数年間だけ執権して退陣する特定の政権ではなく、われわれの子孫も代を継いで向き合う敵対的国家」などと対米非難が展開された。

 式典では金正恩の娘も雛壇に並んだ。5月15日付以来、約80日ぶりの出現となったが、『労働新聞』掲載の写真には小さく映り込んでいるだけであり、記事で「お子さま」への言及もなかった。朝鮮中央テレビの報道では、非常に短いシーンではあったものの、金与正(キム・ヨジョン)党中央委員会副部長が金正恩の娘に対して腰を低めて丁寧に案内する姿も確認された。

 5日付第2面上段には、ベトナム共産党中央執行委員会書記長に就任したトー・ラム国家主席に宛てた金正恩の祝電が掲載された。「私はトー・ラム同志が党中央執行委員会書記長に選出されたことに対して祝賀を送ります。あなたの領導下にベトナム共産党と人民が社会主義建設でより多くの進展を成し遂げることを宿願します」とのわずか二文である。トーを「同志」と呼んではいるものの、この類の祝電としては異例の短さであった。

カテゴリ: 政治
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執筆者プロフィール
礒﨑敦仁(いそざきあつひと) 慶應義塾大学教授。専門は北朝鮮政治。1975年生まれ。慶應義塾大学商学部中退。韓国・ソウル大学大学院博士課程に留学。在中国日本国大使館専門調査員、外務省第三国際情報官室専門分析員、警察大学校専門講師、米国・ジョージワシントン大学客員研究員、ウッドロー・ウィルソンセンター客員研究員など歴任。著書に『北朝鮮と観光』(毎日新聞出版)、共著に『最新版北朝鮮入門』(東洋経済新報社)など。
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