6月24日に行われた、ニューヨーク市長選挙に向けた民主党の予備選の結果が全米に衝撃を与えている。
アンドリュー・クオモ前州知事を破ったのは、33歳の州議会議員、ゾーラン・マムダニ。「民主社会主義者」を自称するウガンダ生まれのインド系モスリム教徒がニューヨークの名だたる政治王朝の当主に勝利したのだから、全国的な注目を集めるのも不思議でない。しかも、この結果は大統領選挙以降の民主党内の混迷に拍車をかけ、来年の中間選挙、さらには2028年大統領選挙に向けた戦略の在り方にも影響を与え得る。党内に与えた衝撃には無視し難いものがある。
路線対立と世代交代論――民主党が抱える二つの課題
民主党内の混迷とは何か。最も大きな原因は、昨年の大統領選挙の敗因に関する見解の対立だ。
党内主流派は、敗北の大きな要因は、移民政策をなどで進歩的立場を過度に追求したため、党の路線が一般の有権者の感覚から遊離したことにあると見る。そのため主流派は党の立場をより中道寄りに動かすことを志向しているが、この方向性は党内左派の主張と真っ向からぶつかる。というのも、選挙結果に関する左派の分析は全く逆で、党の路線が中道に寄りすぎたため、労働階級を中心とする伝統的な支持層が離反したことが敗因と結論付ける。
こうした見解の対立は、トランプ政権への対峙の姿勢をめぐる論争にもそのまま持ち込まれている。一方で、主流派はトランプ政権に対して大規模な抵抗運動を展開すれば、ただでさえ民主党を「極端な左派政党」と決めつける共和党の策謀に力を貸す結果になるので、むしろ政権の自滅を待つ持久戦を志向しているのに対し、党内左派はこうした対応を無為無策として不満を高めている。
対立が表面化したのは、3月に民主党の上院指導部が共和党提案のつなぎ予算案の採決を妨げない方針を打ち出した時だ。
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