インドは「中露の罠」にはまるのか
Foresight World Watcher's 6 Tips
8月31日から9月1日に中国・天津で上海協力機構(SCO)首脳会議、9月3日には中国・北京で抗日戦勝80周年記念式典、9月3日から6日までロシア・ウラジオストクで東方経済フォーラムと、これから1週間は中露主導の重要国際イベントが続きます。
ウラジーミル・プーチン露大統領は2つのイベントに参加するため8月31日から訪中し、9月2日に習近平・中国国家主席と会談の予定。北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記との会談も検討中と伝えられます。一方ではウクライナの「安全の保証」の大筋合意に向けた調整が米欧ウクライナ間で進む中、プーチン氏の発言が注目されます。
SCOの加盟国は10カ国ですが、「対話パートナー国」なども含めれば計26カ国が参加する枠組みです。抗日戦勝80周年記念式典とあわせ、30に近い国・機関から首脳・要人を迎える立場の習国家主席も、多数の会談を持つ見込みです。
中国にとってこの機会は、対米対抗軸の強化に絶好のチャンス。インドのナレンドラ・モディ首相との会談を終えた習国家主席は、関税引き上げに代表される米トランプ政権の保護主義を念頭に、多国間主義の堅持をアピールしました。モディ首相もこれに応じて、両国関係の重要性を強調しました。
米国への対抗は経済の問題にとどまらず、安全保障の枠組みであるクアッド(日米豪印)切り崩しにも繋がる可能性をはらみます。インドは危うい道に踏み込んでいるのではないか。こうした懸念の声を伝える海外メディアが増えています。
フォーサイト編集部が熟読したい海外メディア記事6本、皆様もよろしければご一緒に。
Why India Should Not Walk Into the China-Russia Trap【James Crabtree/Foreign Policy/8月27日付】
「誰かからかかってきた電話に出ることを人が拒むとき、両者の関係は悪化している。ドイツのメディアの報道[フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング紙「トランプが電話をかけてもモディは出ない(Trump ruft an, aber Modi geht nicht dran)」(8月25日付)]によれば、インドのナレンドラ・モディ首相は最近、ドナルド・トランプ米大統領がかけた電話に、まさにこのように対応した」
「ワシントンとの関係の危機に応じてモディが最初にとった外交的対応は、ロシア大統領のウラジーミル・プーチンと中国国家主席の習近平に電話することだった。先週[8月19-21日]、インドのS・ジャイシャンカル外相はモスクワを訪れ、今年後半にインドを訪問する予定のプーチンと会談した」
「モディは今週、中国が主導する上海協力機構(SCO)の首脳会議[略]に出席[8月31日-9月1日]するため北京に向かい、ワシントンからの独立性を示す。モディにとって2018年以来の訪中となり、2020年にヒマラヤ国境で起きた、死者も出る衝突に端を発した激しい対決の時期を経て、予想されるインドと中国の関係の雪解けの前触れとなる。中国と同じくSCOのメンバーであるロシアは、モディとトランプとの対立を利用しようとインドに接近してくるだろう」
元英「フィナンシャル・タイムズ」紙ムンバイ支局長で作家のジェームズ・クラブツリーは、コラムニストを務める米「フォーリン・ポリシー(FP)」誌に「中露の罠にインドが陥ってはいけない理由」(8月27日付)を寄せた。
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