自民党総裁・高市早苗のパラドックス
Foresight World Watcher's 8 Tips
自民党総裁選は、多くの予想を裏切って高市早苗前経済安全保障相の勝利となりました。予測市場プラットフォーム(賭けサイト)として有名な米国の「ポリマーケット」には「Next Japanese Prime Minister」という項目が立っており、これも直前まで「小泉進次郎の当選」が確率8割以上と出ていました。
麻生太郎元首相(自民党最高顧問)が「高市支持」を打ち出し、決選投票の行方を決めたことが決定打――というのはいわば2次的な要素であって、最大の要因は党員・党友票の動きです。2021年の総裁選では党員・党友票の2割弱獲得に止まった高市氏は、今回、4割を集める首位でした。党員・党友の意向に議員が従った格好です。
注目すべきは、高市氏の何を党員・党友が支持したのかです。7月の参院選での参政党の躍進が見逃せません。自民党の地方支部党員の間では、「日本人ファースト」を掲げる参政党に共感を示す層が顕著に増えていたと指摘されます。掲げる政策テーマに鑑みて、ここに最も親和性が高いのは、やはり高市氏と見るべきでしょう。自民党は保守基盤の侵食に直面し、社会の保守観のトレンドに最も親和性の高い候補を選ぶことで、危機を乗り切ろうとしたようです。
そうであれば、高市氏を総裁の座に押し上げたのは、いわば自民党の防衛本能。高市氏は10月15日にも召集される臨時国会で首相に選出される見通しです。海外メディアには「日本初の女性首相誕生」を前向きに評価する声が多いものの、後出の米「フォーリン・ポリシー」誌掲載の論考のように、「党内での政治的信頼性と権力を保持する」ことが高市氏の振る舞いの本質ではないのかという、懐疑の視線も存在します。
「政治は通常の場合、資源配分の技術である。しかし、時として政治は単なる技術に留まらず、資源配分のあり方そのものを変える必要性に直面する」(冨田浩司著『マーガレット・サッチャー:政治を変えた「鉄の女」』)
自民党を守るために選び出された指導者は、資源配分のあり方そのものを変える国家の問題に踏み込めるか。困難な挑戦が始まります。
ドナルド・トランプ米大統領が提示したパレスチナ自治区ガザの和平案に関する論考と、米国債券市場の“今にも折れそう?”なリスクを指摘する記事も加え、フォーサイト編集部が熟読したい海外メディア記事8本、皆様もよろしければご一緒に。
Tony Blair seeks to play key role in Gaza under Donald Trump peace plan【George Parker, Andrew England, Abigail Hauslohner/Financial Times/9月26日付】
「英国の元首相、トニー・ブレア卿は、トランプ政権が策定中の和平プランのもとで、戦後のガザ運営において重要な役割を果たそうと模索している。/[略]ダウニング・ストリートを去った後、中東特使を務めたブレアは、イスラエルによるハマスとの2年近くにわたる戦争が終わった後にガザを統治する国際信託統治計画を売り込むため、数カ月前から個人の立場で活動してきた」
トランプ政権がガザでの和平案を打ち出したことを受け、イスラエル-ハマス紛争の停戦・終結にようやく光が見えてきた。このタイミングで活発な動きを見せているのが英国の元首相、ブレアだ。
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