ミャンマーのレアアースに手を伸ばすトランプは危うい

Foresight World Watcher's 7 Tips

執筆者:フォーサイト編集部 2025年11月9日
エリア: アジア 北米
北部カチン州などレアアース産出地域の軍事政権による支配を米国が支援する可能性も指摘される[前線で警戒にあたるカチン独立軍(KIA)の兵士たち=2013年1月22日、ミャンマー・カチン州](C)REUTERS/Kaung Htet

 軍事政権の支配が続くミャンマーで、12月28日から来年1月後半にかけて実施される総選挙の選挙戦が始まっています。国軍系の政党USDP(連邦団結発展党)に勝たせて「民政移管」をアピールする狙いは明らかですが、ロシアと中国が選挙を支援する方針の一方、軍主導の選挙を“承認した”ことになるのは避けたいASEAN(東南アジア諸国連合)が監視団の派遣をためらっているなど、波紋は国際問題にも広がります。

 ミャンマーは世界第3位のレアアース産出国です。ミャンマー産レアアースを買い取るのは中国で、中国は精錬・加工して第3国に輸出します。2021年2月のクーデターで始まった軍政の下で、中国へのレアアース輸出は急増したと見られています。

 そのミャンマーから中国へのレアアース供給に割って入ろうと試みているのが米国です。ミャンマーの北部カチン州では、少数民族武装勢力のカチン独立軍(KIA)が国軍勢力からレアアースの産地を奪取したと伝えられ、米「フォーリン・ポリシー(FP)」誌に掲載された記事によれば、トランプ政権ではこのKIAと軍事政権の和平を仲介するなどの形で、レアアースにアクセスしようとしているようです。一方の中国が総選挙に向け国軍への肩入れを強める中で、トランプ政権のミャンマー戦略の行方はどうなるのか。FP誌記事は「重大な戦略的失敗」のリスクを指摘します。

 他にニューヨーク市長選およびニュージャージー州とバージニア州の知事選で民主党候補が当選した11月4日「民主党大勝利の一夜」の評価、11月3日に亡くなったディック・チェイニー元米副大統領がMAGA運動に与えた影響など、フォーサイト編集部が熟読したい海外メディア記事7本。皆様もよろしければご一緒に。

Democrats risk drawing the wrong lessons from one good day【Economist/11月5日付】

A night of big wins for the Democrats【Economist/11月5日付】

「11月4日に実施された選挙は、ミネアポリス市、ニュージャージー州、ニューヨーク市、バージニア州の市政・州政、ジョージア州の電気料金、ペンシルベニア州最高裁判所の人事について結論を出した。また、ドナルド・トランプの2期目が、昨年11月に彼をホワイトハウスに送り返すことを選んだ有権者が期待したとおりになっているか否かについての始めてのテストともなった。全体として民主党は予想以上に好成績を収めた。しかし、この一晩の成功で、同党が抱える長年の問題が解決したわけではない」

 英「エコノミスト」誌は、以前からトランプ政権に批判的な立場を貫いてきたが、今回、州知事・市長選挙などで大勝した民主党についても厳しい見方を示している。「1日の好調から誤った教訓を引き出すリスクのある民主党」(11月5日付)は、選挙結果を次のように分析する。

「一部の民主党員はこうした状況を見て、ニューヨーク市長選は党の極左政策が有権者を熱狂させている証拠だと結論づけるだろう。民主党は評論家が考えるより好調であり、来年の中間選挙はほぼ勝利確実だと。しかしそれは誤りだ」

 そして、勝利から引き出すべき選挙戦における「正しい教訓」として次の3点を挙げる。

カテゴリ: 政治 経済・ビジネス
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