Weekly北朝鮮『労働新聞』
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3代指導者に仕えた金永南の国葬を挙行(2025年11月2日~11月8日)

執筆者:礒﨑敦仁 2025年11月10日
タグ: 北朝鮮 金正恩
エリア: アジア
金永南氏は2018年の平昌五輪開会式に出席したことでも知られる[平壌の西将会館で出棺される金永南前最高人民会議常任委員長の棺を乗せた霊柩車=2025年11月5日](C)AFP=時事
最高人民会議常任委員会の前委員長、金永南が11月3日に死去し、5日に国葬が営まれた。葬儀委員会の筆頭は金正恩で、金与正は33番目に名を連ねている。6日、朝鮮中央通信は「米国担当次官」キム・ウンチョルの談話を公表したが、この名前の外交官がこれまで『労働新聞』に登場したことはない。【『労働新聞』注目記事を毎週解読】

 11月3日、金永南(キム・ヨンナム)前最高人民会議常任委員会委員長が死去した。享年97歳。『労働新聞』は4日付1面トップで訃告を出し、金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長がその霊柩を訪ねて深い哀悼の意を表明したことを報じた。

 1998年9月、国家の最高指導者を主席から国防委員会委員長に変更すると同時に、対外的な国家元首の役割については最高人民会議常任委員会委員長が担うという変則的な国家体制へと移行する憲法改正が行われた。金永南は、その時から2019年4月までの長きに亘って同職にいたばかりか、1983年12月から外交部長(現在の外相)兼政務院副総理の地位にあり、いわば外交の表の顔だった人物である。2018年2月には金与正(キム・ヨジョン)党中央委員会副部長とともに韓国・平昌(ピョンチャン)冬季五輪の開会式に出席したことでも知られ、昨年死去した弟・金己男(キム・ギナム)元朝鮮労働党中央委員会宣伝扇動部長とともに、3代指導者それぞれから絶大な信頼を得てきた忠臣とも言える。翌5日には国葬が挙行され、新美里(シンミリ)愛国烈士陵での告別式には金正恩も出席した。

カテゴリ: 政治
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執筆者プロフィール
礒﨑敦仁(いそざきあつひと) 慶應義塾大学教授。専門は北朝鮮政治外交。1975年生まれ。慶應義塾大学商学部中退。韓国・ソウル大学大学院博士課程に留学。在中国日本国大使館専門調査員、外務省第三国際情報官室専門分析員、警察大学校専門講師、米国・ジョージワシントン大学客員研究員、ウッドロー・ウィルソンセンター客員研究員など歴任。著書に『北朝鮮と観光』(毎日新聞出版)、『北朝鮮を読み解く』(時事通信社)、共著・編著に『最新版北朝鮮入門』(東洋経済新報社)、『北朝鮮を解剖する』(慶應義塾大学出版会)など。
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