チャーリー・カークがユタ・バレー大学のキャンパスで凶弾に斃れてから2カ月。日本でも一部の専門家のあいだでのみ知られていたかれの名前は、今や多くのひとが知るところになっている。アメリカでは、カークに関連したニュースのとぎれる暇がないほど、さまざまなひとたちがかれについて語り、その語りがさらなる波紋を投げかけている。
アリゾナ州フェニックス郊外でおこなわれたカークの葬儀では、ドナルド・トランプ大統領をはじめ政権の閣僚たちが列席し、その早すぎる死を悼んだ。悲劇的な暗殺によって、カークはアメリカで久方ぶりに誰もが知る右派の知識人という地位を死後に得た。しかもかれは、その言動や行動から極右と言って差し支えない人物だった。死後のカークの名声の高まりによって、MAGA派と呼ばれるトランプ支持の政治家や支持者たちのなかで、あるいは新右翼に分類される右派の新しい諸思想のあいだで、極右主義は存在感を高めつつある。
そのMAGA派や新右翼であるが、カークの死をきっかけに、それら陣営が結束力を高めているかと言えば、必ずしもそうではない。MAGA派にしても新右翼にしても、その旗印のもとにはさまざまな潮流が結集しており、そもそもからして一枚岩ではなく、内部に潜在的な対立軸をいくつも実際には抱えてきた。そのなかでも、ある対立軸の先鋭化を契機として、現在、内部ではこれまでになく対立が激しくなりつつある。その対立軸とは、アメリカによるイスラエル支持と中東への介入である。
著名なトランプ支持者同士で非難の応酬
アメリカは世界の警察官であることをやめるというメッセージを常々発してきたトランプが、政権を奪還したあともイスラエルを擁護して中東への介入をやめないことをめぐっては、第二次トランプ政権が発足して以降、トランプに近い人びとのなかでも不満が漏らされてきた。その一方で、福音派やあるいはユダヤ系の人びとを中心に、イスラエルを半ば例外とする政権の対応を支持する声もトランプ支持層の一部には根強く、イスラエルをめぐる対立は徐々に顕在化してきた。
この対立をひとつ象徴するのが、マージョリー・テイラー・グリーンとローラ・ルーマーそれぞれの発言、あるいは両者のSNS上での直接的な応酬である。
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