ホルムズ海峡封鎖で露呈、原油備蓄だけでは語れぬ「21世紀の油断」

執筆者:滝田洋一 2026年3月21日
エリア: アジア 中東
アジア各国の化学メーカーはナフサの目詰まりから減産に追い込まれた[エチレンなどを生産する三菱ケミカルの茨城事業所=2025年12月、茨城県神栖市](C)時事
ホルムズ海峡を通過したタンカーが日本に到着するまで約20-30日。米・イスラエルとイランの武力衝突が始まった2月28日から計算すれば、日本に到着する中東産原油は3月下旬から“消え”始める。当面は備蓄で対応できる見通しだが、原油が関わる様々なサプライチェーンに危険なボトルネックが潜むことも、すでに明白になっている。たとえば、石油化学の必須原料であるナフサの供給リスクが浮上した。物流ではトラックの燃料不足に陥る地域が出るかもしれない。電力料金は、LNG価格高騰の打撃を回避するのは容易でない。

 好事魔多し。実質の手取り(可処分所得)が1月以降ようやく浮上し、経済が好循環に入りかけた矢先に、イランをめぐる武力衝突が勃発した。原油、ガス輸送の大動脈であるホルムズ海峡が事実上封鎖されたことで、私たちの生活も深刻な試練に直面しつつある。

 3月11日、国際エネルギー機関(IEA)は加盟32カ国が原油備蓄の共同放出に踏み切ると発表した。放出量は合計で4億バレル。放出量としては過去最大だが、紛争前にホルムズ海峡を通る原油は日量2000万バレルだったので、その20日分という勘定になる。

 高市早苗首相は同日、IEAの決定を待たずに3月16日から日本の原油備蓄を放出すると発表した。ガソリンの店頭価格が1リットル200円を超えかねない事態になったからで、全国平均で170円程度に抑える方針を示した。だが、首相も認めるように「3月下旬以降、日本への原油輸入は大幅に減る」。このままホルムズ海峡の封鎖が続けば、虎の子の備蓄も心もとなくなる。

LNGの「量」は足りても「電気代」に大きな懸念

 原油、ガス、電力、物流、石油化学製品など関連する分野で何が起きているのか。データで確認することにしよう。

カテゴリ: 経済・ビジネス
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執筆者プロフィール
滝田洋一(たきたよういち) 名古屋外国語大学特任教授 1957年千葉県生れ。慶應義塾大学大学院法学研究科修士課程修了後、1981年日本経済新聞社入社。金融部、チューリヒ支局、経済部編集委員、米州総局編集委員、特任編集員などを歴任後、2024年4月より現職。リーマン・ショックに伴う世界金融危機の報道で2008年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」解説キャスターも務めた。複雑な世界経済、金融マーケットを平易な言葉で分かりやすく解説・分析、大胆な予想も。近著に『古典に学ぶ現代世界』『世界経済大乱』『世界経済 チキンゲームの罠』『コロナクライシス』など。
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