日本も購入を検討、トルコ「ドローン兵器」の性能と産業戦略

執筆者:今井宏平 2026年3月23日
タグ: トルコ
エリア: ヨーロッパ
トルコのドローン製造最大手、バイカル社のセルチュク・バイラクタル会長は、エルドアン大統領の娘婿であり公正発展党政権と密接な関係にあると見られる[クロアチア空軍が運用するバイラクタルTB2=2026年1月12日、クロアチア・ザグレブ](C)AFP=時事
安価で効果的な兵器として「戦争のコスト構造を変えた」とも称されるドローン(無人機)は、日本のスタンド・オフ防衛能力の整備にも欠かせない。政府はイスラエル、トルコ、ウクライナなど複数国を候補にドローンの調達を検討中だ。そのなかでも、近年、急成長しているトルコの軍需産業はアジア・太平洋への積極的な販路拡大でも注目される。同国のドローン産業の強みとその戦略を分析する。

 2025年8月19日、当時の中谷元防衛大臣は、ハルク・ギョルギュン国防産業庁長官と会合するためにトルコを訪問し、翌20日に日本がトルコのドローン兵器の購入を検討していると述べた。ここでは、なぜ日本はトルコのドローン兵器の購入に興味を持ったのか、トルコのドローン兵器の輸出や開発の現状はどうなっているのかという点について検討したい。

ドローン兵器新興国だが「性能は証明済み」

 ドローン兵器の新興国と言われるトルコの強みは、低価格と実戦で使用され、その能力が実証済みというである。低価格であるがために、多くのアフリカ諸国やアジア諸国がトルコのドローン兵器を購入している。また、シリア北部でのクルド民族主義勢力との抗争、北イラクに潜伏しているクルディスタン労働者党(PKK)への攻撃、リビア内戦、2020年のナゴルノ・カラバフ紛争、2022年2月からのロシアのウクライナ侵攻などでトルコのドローン兵器が実際に使用さ、成果を上げている。2025年5月のインドとパキスタンの軍事衝突においても、インド軍が撃ち落としたパキスタン軍のドローン兵器の中にトルコのドローン兵器であるバイラクタルTB2(Bayraktar TB2)と、トルコのバイカル社とパキスタンのNASTP社が共同開発している自爆型ドローン兵器、YIHA-IIIがあったとコメントしている1。パキスタン軍は300から400機ものトルコのドローン兵器を使用したとされる。

開発を牽引するバイカル社

 トルコで最も代表的なドローン兵器はバイカル社のバイラクタルTB2である。バイカル社CTO(最高技術責任者)兼取締役会長のセルチュク・バイラクタル(Selçuk Bayraktar)は2022年3 月に、「バイカル社は世界で最も多くの国にドローン兵器を輸出している会社である」と述べている2。バイカル社は1986年に自動車部品製造会社として発足した。

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執筆者プロフィール
今井宏平(いまいこうへい) ジェトロ・アジア経済研究所研究員。中東工科大学Ph.D. (International Relations)、中央大学博士(政治学)。専門は現代トルコ外交・国際関係論。2004年に中央大学法学部卒業後、同大大学院を経てトルコのビルケント大学に留学。中東工科大学国際関係学部博士課程修了後、中央大学大学院法学研究科政治学専攻博士前期課程修了。2016年より現職。著書に『中東秩序をめぐる現代トルコ外交――平和と安定の模索――』(ミネルヴァ書房、2015年)、『トルコ現代史――オスマン帝国崩壊からエルドアンの時代まで――』(中央公論新社、2017年)、『国際政治理論の射程と限界』(中央大学出版部、2017年)がある。
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