トランプ大統領の発言とアクション(12月11日~17日):「ワイルズ発言」報道を連携プレイで巧みに火消し、建国250周年に向け結束強化
今年の「新語・流行語大賞」年間大賞には、高市早苗首相の「働いて働いて働いて働いて働いてまいります」が選ばれた。英語圏では、オックスフォード辞書が「今年の単語」として、「rage bait」を発表。「怒りや憤りを引き起こすことを意図して、わざと苛立たせる・挑発的・不快な内容に仕立てられたオンラインコンテンツ」を指す。日本語ならば「炎上商法」といったところだろう。
ドナルド・トランプ大統領ほど「炎上」を効果的に使いこなす政治家はいない。映画『スタンド・バイ・ミー』などを手掛けたロブ・ライナー氏の殺害事件について、トゥルース・ソーシャルで「(トランプ氏に対する批判を続けてきたライナー氏が)ドナルド・J・トランプ大統領への激しい執着により人々を狂わせた」ことがその死に繋がったと述べ、「トランプ錯乱症(TRUMP DERANGEMENT SYNDROME)」と表現してみせた。当然ながら民主党のみならず一部共和党からもバッシングを受けたが、ニュースのヘッドラインを飾ることには成功した。
国民向け演説では「暮らし向きの危機」への対応、インフレ減速を強調
もっとも、足元では支持率が低迷している。2026年の建国250周年と中間選挙を前に、「暮らし向きの危機(affordability crisis)」が問題視され、物価の高止まりへの不満も燻る。NPR/PBS/マリストが12月8~11日に1440人を対象に実施した世論調査では、経済政策の支持率は36%と政権発足以来の最低を更新した。
トランプ氏が12月17日に国民向け演説を行ったのは、『暮らし向きの危機』への配慮に加え、この11カ月間の実績を強調する狙いがあったとみられる。演説の冒頭、トランプ氏は「11カ月前、私は深刻な課題を抱えた状況を引き継いだ。いま、その立て直しに取り組んでいる」と語りかけた。演説は18分間にわたり、ジョー・バイデン前政権の批判と、自身の政権での成果の強調を軸に構成。特に物価については、バイデン前政権で「ガソリンは30〜50%上昇、ホテル料金は37%、航空運賃は31%上昇したが、足元でそれらはすべて下がり始めており、しかも急速に低下している」と主張した。
米消費者物価指数(CPI)の品目別にバイデン政権とトランプ政権のインフレ動向を比較し【チャート1】、自身の経済政策がインフレ抑制を促していると訴えるのも忘れない。また、バイデン前政権下では、新規住宅ローンの年間負担が1万5000ドル増えたが、現政権では11カ月でその負担を3000ドル減らしたと喧伝した。その他、18兆ドルの対米投資を呼び込んだことや、「最大600%」の薬価引き下げを狙った取り組みを進めていることなども強調した。
多くのメディアなどは、こうした数字に懐疑的だ。
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