スペイン政府が追い詰めるバスク「テロ支援政党」

執筆者:国末憲人 2002年10月号
タグ: スペイン
エリア: ヨーロッパ

[パリ発]スペイン北部バスク地方の独立をめざす急進派政党「バタスナ」の合法性を問う審理が九月三日からスペイン最高裁で始まった。同党が武装組織「バスク祖国と自由」(ETA)と事実上一体であり、テロ組織との連携を禁じた政党法に違反する、と見なした政府の申請を受けての対応だ。政府の主張が受け入れられる可能性が高く、早ければ年内にも、バタスナは非合法化される見込み。 政府は一気にETA関連の組織を壊滅させたい意向だが、非合法化によって「紛争がむしろ泥沼化するのでは」との懸念も出てきている。非合法化が実現した場合、バタスナが来春の統一地方選をボイコットするとの観測も広がっている。バタスナは欧州議会で一議席、バスク自治州議会で七議席を持つほか、バスク地方の市町村議会で多くの議員を抱え、議員の互選で選ぶ首長を出している町さえある。地域に密着した彼らは、時に反ETAの動きを監視する役目も果たしてきた。アスナール政権与党の重鎮でバスク出身のオレハ元内相は、エル・パイス紙のインタビューで「選挙実施に全力を尽くすが、今後一年間はバスクで何が起こるか誰も予想ができない」と語り、選挙妨害やテロ激化の可能性も示唆した。

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執筆者プロフィール
国末憲人(くにすえのりと) 東京大学先端科学技術研究センター特任教授 1963年岡山県生まれ。85年大阪大学卒業。87年パリ第2大学新聞研究所を中退し朝日新聞社に入社。パリ支局長、論説委員、GLOBE編集長、朝日新聞ヨーロッパ総局長などを歴任した。2024年1月より現職。著書に『ロシア・ウクライナ戦争 近景と遠景』(岩波書店)、『ポピュリズム化する世界』(プレジデント社)、『自爆テロリストの正体』『サルコジ』『ミシュラン 三つ星と世界戦略』(いずれも新潮社)、『イラク戦争の深淵』『ポピュリズムに蝕まれるフランス』『巨大「実験国家」EUは生き残れるのか?』(いずれも草思社)、『ユネスコ「無形文化遺産」』(平凡社)、『テロリストの誕生 イスラム過激派テロの虚像と実像』(草思社)など多数。
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