イラク戦争が招いたフランスとドイツの接近

ラムズフェルド米国防長官の「古くさい欧州」発言は、仏独に共通の“敵”を認識させた。市民レベルにまで広がる仏独の接近の行方は――[パリ発]この一日は将来、欧州現代史の分岐点として位置づけられるかも知れない。 十月十七日、ブリュッセルで開かれたEU(欧州連合)首脳会議の二日目だった。シュレーダー独首相はこの日、独連邦議会への出席のため退席。彼が自分に代わって独代表の座を依頼したのは、フィッシャー外相でも担当の独大使でもなく、シラク仏大統領だった。大統領は独首相顧問を脇に座らせ、時に「仏独共通の立場として」と前置きし、時に「仏が支持する独の立場として」と前置きし、欧州憲法や移民問題について何度かドイツの立場を代弁する発言をしたという。

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執筆者プロフィール
国末憲人(くにすえのりと) 東京大学先端科学技術研究センター特任教授 1963年岡山県生まれ。85年大阪大学卒業。87年パリ第2大学新聞研究所を中退し朝日新聞社に入社。パリ支局長、論説委員、GLOBE編集長、朝日新聞ヨーロッパ総局長などを歴任した。2024年1月より現職。著書に『ロシア・ウクライナ戦争 近景と遠景』(岩波書店)、『ポピュリズム化する世界』(プレジデント社)、『自爆テロリストの正体』『サルコジ』『ミシュラン 三つ星と世界戦略』(いずれも新潮社)、『イラク戦争の深淵』『ポピュリズムに蝕まれるフランス』『巨大「実験国家」EUは生き残れるのか?』(いずれも草思社)、『ユネスコ「無形文化遺産」』(平凡社)、『テロリストの誕生 イスラム過激派テロの虚像と実像』(草思社)など多数。
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