電話が鳴って、大阪に住む古い友人からだった。声が上ずっている。 「昨日はオサマが殺されよった。世界最大の大捕り物が片付いた。きょうはタイガースが巨人戦で3連発や。何たる吉日ぞや」 人間トシを取ると物事を正しく把握できなくなる。国際問題もプロ野球も、衰えた脳の中で混然かつ一体になってしまうらしい。 私も彼の興奮に巻き込まれて立ち上がり、寝室の整理ダンス上に置いてある色紙を取って眺めた。 「トクオカに。早くよくなれ。ランディ・バース44」 26年前のことだ。広告会社でタイガースを担当していた姪が、バース(背番号44)に書かせた色紙である。神話のような甲子園。バース、掛布、岡田が3発連続バックスクリーンに叩き込んだあの奇跡としか思えない場面。
この続きは会員登録をすると読むことができます。
「フォーサイト」は、月額800円のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。
フォーサイト会員の方はここからログイン