饗宴外交の舞台裏
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「最も招待客の多い外国公館」仏大使公邸を切り盛りする若手料理人
2012年の新年が明けて、フランス大使公邸の厨房をあずかる料理長のセバスチャン・マルタン氏(34)には、4カ月ぶりに忙しい日常が戻ってきた。1月6日、新任のクリスチャン・マセ駐日フランス大使が夫人と共に赴任してきたからだ。 前任のフォール大使が昨年9月に離任した後、主のいない大使公邸には静かな時間が流れていた。マルタン氏はふだんは出来ない食材の仕入れ先の開拓や、食器類、鍋類の点検、買い付けをして過ごしたが、新大使の赴任で公邸は再び招宴外交の場として動き出した。 マセ大使の最初のレセプションは1月12日、イエス・キリストが神の子として見いだされたエピファニー(公現祭)の祝宴で、日仏関係者約200人が招かれた。日仏の菓子職人が作った特別菓子「ガレット・デ・ロワ」を賞味する集いだったため、マルタン氏の出番はなかった。饗宴料理の初披露の機会は翌13日、来日したジュペ仏外相を囲む大使主催の夕食会となった。「忙しく立ち働いているのがいいです。緊張感と充実感がありますから」。公邸で働き始めて8年。仕える大使は4人目となる。

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