曽蔭権スキャンダルに揺れる香港――行政長官選挙は北京の代理戦争か

執筆者:樋泉克夫 2012年3月7日
エリア: アジア

 香港を「東南アジアの部屋」で扱うのは場違いなような気もするが、これまで香港が東南アジア華人社会の「首都」としての機能を果たしてきたことを考えれば、やはり香港も東南アジアに含めてもいいだろう。2月末、その香港に1週間ほど滞在した。

 河村たかし名古屋市長の南京大虐殺否定発言は香港にも伝わったが、激しい批判を行なったのは中国系紙のみ。たとえば「文匯報」(2月23日付け)などは「日市長否認大屠殺 中方交渉 逐歩升級」「南京与名古屋『断交』 外交部支持」と、一面全体を使って“怒りの拳”を振り上げてはみたものの、「星島日報」、「明報」、「蘋果日報」などの地元有力紙の扱いは限りなくゼロに近かった。「河村発言に一般香港住民の関心は極めて薄い」というのが、何人かの友人の共通した見方だ。因みに、事あるごとに激しい日本批判の社説を展開するタイの有力華字紙「世界日報」も、河村発言には沈黙したまま。

カテゴリ: 政治
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執筆者プロフィール
樋泉克夫(ひいずみかつお) 愛知県立大学名誉教授。1947年生れ。香港中文大学新亜研究所、中央大学大学院博士課程を経て、外務省専門調査員として在タイ日本大使館勤務(83―85年、88―92年)。98年から愛知県立大学教授を務め、2011年から2017年4月まで愛知大学教授。『「死体」が語る中国文化』(新潮選書)のほか、華僑・華人論、京劇史に関する著書・論文多数。
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