「人権」に揺れるサッカー欧州選手権

 6月8日から始まるポーランド・ウクライナ共催のサッカー欧州選手権(ユーロ2012)の開幕戦は、新ワルシャワ国立スタジアムで行なわれる開催国ポーランドとギリシャの一戦である。まるで、大向こう受けを狙う興行主があえて仕組んだかのような開幕戦だと言えるかもしれない。

開幕戦は「優等生vs.問題児」

 ギリシャが欧州を、否、世界経済を奈落の底に引き摺り込もうとする問題児と化していることはあえて説明を要しない(そして運命の17日のギリシャ再選挙まで残る日数はわずかである。緊縮を拒否する急進左派連合が第一党となる可能性は依然小さくない)。
 片やポーランドは、信用危機に苦吟する欧州の中で好調な経済を誇る数少ない国の1つであり、「欧州の優等生」という形容が常套句となっている。通貨ユーロの威信が低下を続ける危機の渦中、ポーランドは欧州とユーロ圏の命運を担う「希望の星」と持ち上げられる。
 そんなポーランドとギリシャという明暗を織り成す国同士の開幕戦は、欧州の未来にとってどこか暗示的な試合になるかもしれないと言ったら、大袈裟にすぎるだろうか。

カテゴリ: スポーツ
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執筆者プロフィール
佐藤伸行(さとうのぶゆき) 追手門学院大学経済学部教授。1960年山形県生れ。85年早稲田大学卒業後、時事通信社入社。90年代はハンブルク支局、ベルリン支局でドイツ統一プロセスとその後のドイツ情勢をカバー。98年から2003年までウィーン支局で旧ユーゴスラビア民族紛争など東欧問題を取材した。06年から09年までワシントン支局勤務を経て編集委員を務め退職。15年より現職。著書に『世界最強の女帝 メルケルの謎』(文春新書)。
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