行き先のない旅 (17)

ユーロスターで愛を育む英仏カップルの「ある難関」

執筆者:大野ゆり子 2004年10月号
エリア: ヨーロッパ

 熱愛中のカップル、イギリス人女性Cとフランス人男性Fの恋が、次のステージに移行した。ともに四十代、独身。それぞれロンドンとパリで責任ある仕事をしている彼らの遠距離恋愛を支えてきたのが、二つの都市を約三時間で結ぶ超高速列車、ユーロスターである。十年前に英仏海峡トンネルが開通した時には、英国タブロイド紙が「フランスから乱れた文化が入る」と煽り、仏紙は「英国に買うものはない」と書きたてたそうだが、地続きになるという心理的効果は大きく、人の往来は確実に増えてきている。北フランスのユーロスター停車駅であるリール市などでは、日用品をたくさん買い求めにくるロンドン市民を大勢見かける。

カテゴリ:
フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
執筆者プロフィール
大野ゆり子(おおのゆりこ) エッセイスト。上智大学卒業。独カールスルーエ大学で修士号取得(美術史、ドイツ現代史)。読売新聞記者、新潮社編集者として「フォーサイト」創刊に立ち会ったのち、指揮者大野和士氏と結婚。クロアチア、イタリア、ドイツ、ベルギー、フランスの各国で生活し、現在、ブリュッセルとバルセロナに拠点を置く。
  • 24時間
  • 1週間
  • f
back to top