インテリジェンス・ナウ

北朝鮮拉致実行犯・辛光洙をみすみす見逃した日本警察

執筆者:春名幹男 2006年2月号
タグ: 日本 韓国 北朝鮮
エリア: アジア

 寒い年末、足腰が弱った元公安捜査官は面会を丁重に断り、電話ならと相手してくれた。 老人は、肝心の話は「ハッハッハ」と笑ってごまかした。「二十年前、辛光洙容疑者を立件しないと決まった時、泣いて抗議したんですって?」と聞いた時だ。 辛容疑者が韓国国家安全企画部(安企部=当時)に捕まったのは一九八五年春。取り調べで、八〇年に大阪の中華料理店コック、原敕晁さんを拉致したことを自供。その年の十一月末、ソウル地裁は死刑判決を言い渡した(後に無期懲役に減刑)。 自供内容は日本の警察庁にも伝えられたが、その際日本の警察は立件しないと決めた。元捜査官の涙の理由はそこにある。

カテゴリ:
フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
執筆者プロフィール
春名幹男(はるなみきお) 1946年京都市生れ。国際アナリスト、NPO法人インテリジェンス研究所理事。大阪外国語大学(現大阪大学)ドイツ語学科卒。共同通信社に入社し、大阪社会部、本社外信部、ニューヨーク支局、ワシントン支局を経て93年ワシントン支局長。2004年特別編集委員。07年退社。名古屋大学大学院教授、早稲田大学客員教授を歴任。95年ボーン・上田記念国際記者賞、04年日本記者クラブ賞受賞。著書に『核地政学入門』(日刊工業新聞社)、『ヒバクシャ・イン・USA』(岩波新書)、『スクリュー音が消えた』(新潮社)、『秘密のファイル』(新潮文庫)、『米中冷戦と日本』(PHP)、『仮面の日米同盟』(文春新書)などがある。
  • 24時間
  • 1週間
  • f
back to top