「酸性海(acid ocean)」は、生態系や漁業だけでなく大気中の二酸化炭素濃度にも致命的悪影響を与える“知られざる危機”だ。[ワシントン発]環境問題や環境保護といえば、土壌や大気、河川などの問題だと思う人がほとんどだろう。我々が陸上で生活していることを思えば、それも驚くには当たらない。しかし、地表の三分の二を占める海洋は極めて重大な意味を持ち、我々が少なくとも同じくらいの関心を払うべき問題と言える。 いま対応が求められる海洋問題は、枚挙に遑がない。横行する乱獲とそれに伴う漁業の破綻、(赤土の流出によって)世界中の沿岸水域で巨大化する“死の海域(貧酸素水塊)”、森林の皆伐にも匹敵する規模の底引き網漁、そして漁業の巻き添えとなって死んでいく生物の多さ――漁網や釣り糸に掛かっていたずらに命を落とすサメやウミガメ、そしてアホウドリなどの海鳥は後を絶たない。
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