行き先のない旅 (59)

パリの街の新名物は「銀色の自転車」の群れ

執筆者:大野ゆり子 2008年4月号
エリア: ヨーロッパ

 パリで今回、目についたのは、銀色の自転車で颯爽と走る人々だった。デザインがお洒落で、ハンドルの形も自転車というよりミニバイクのよう。 パリという街も、渋滞に巻き込まれるとどうにもならない街だ。凱旋門、セーヌ川と美しいはずの風景も、急いでいるときには、楽しむ心の余裕がなくなる。タクシーが遅々として進まない中、ミーティングの時間が近づく。いらいらしているこちらの横を、銀色の自転車に乗る人々が、すずしい顔ですいすいと通り抜けてゆく。 なぜ、銀色の自転車がこんなに多いのか。その答えは、パリで昨年から導入された“ヴェリブ”「Velib'」(Velos en libre-service=自転車セルフサービス=の略)という、二万台の自転車を市が初乗り三十分間無料で貸すサービスにあった。利用料は一日一ユーロ、一週間五ユーロと極めて安い。

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執筆者プロフィール
大野ゆり子(おおのゆりこ) エッセイスト。上智大学卒業。独カールスルーエ大学で修士号取得(美術史、ドイツ現代史)。読売新聞記者、新潮社編集者として「フォーサイト」創刊に立ち会ったのち、指揮者大野和士氏と結婚。クロアチア、イタリア、ドイツ、ベルギー、フランスの各国で生活し、現在、ブリュッセルとバルセロナに拠点を置く。
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