中東―危機の震源を読む (46)

フィリピン政治で解決不能 ミンダナオ和平の「不遇」

執筆者:池内恵 2008年10月号
エリア: 中東 アジア

 フィリピン・マニラ中心部の「黄金モスク」を訪れた。モスク訪問時の応対や、モスクのおかれた環境や雰囲気で、その国でイスラーム教徒がおかれた状況のおおよそを感じ取ることができる。 ムスリムが多数派の国では、モスクにわざわざ外国人が訪ねてくるというのは、イスラーム教徒にとって自らの信仰の優越性を感じ、誇りに思う場面である。余裕を持って応対し、できるだけ良いところを見せたいと気を配る。善意から改宗の誘いも次々とかけてみる。モスク内部は各国の都市のもっとも清潔な場所である。 しかしイスラーム教徒が少数派で、苦しい立場に置かれている国では、対応は猜疑心に満ち、門を閉ざそうとする。

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執筆者プロフィール
池内恵(いけうちさとし) 東京大学先端科学技術研究センター グローバルセキュリティ・宗教分野教授。1973年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程単位取得退学。日本貿易振興機構アジア経済研究所研究員、国際日本文化研究センター准教授を経て、2008年10月より東京大学先端科学技術研究センター准教授、2018年10月より現職。著書に『現代アラブの社会思想』(講談社現代新書、2002年大佛次郎論壇賞)、『イスラーム世界の論じ方』(中央公論新社、2009年サントリー学芸賞)、『イスラーム国の衝撃』(文春新書)、『【中東大混迷を解く】 サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』 (新潮選書)、 本誌連載をまとめた『中東 危機の震源を読む』(同)などがある。個人ブログ「中東・イスラーム学の風姿花伝」(http://ikeuchisatoshi.com/)。
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