男性が女性に声をかける、いわゆる「ナンパ」というテクニックを国際比較するとしたら、恐らくイタリア人男性の右に出るものはいないだろう。以下は私が目撃した例である。 夕暮れ時のフィレンツェで、女性が一人でアルノ川沿いを歩いていた。時刻は午後六時ごろ。夕闇が少しずつあたりを覆い、沈みかける太陽が水面に映って、きらきらと黄金色に輝いている。そこに偶然通りすがった(ように見える)男が、「美しい夕焼けだよね」と女に話しかけた。ここで「いいえ」という女はまずいない。相手の意図がわからないから、とりあえず「そうね」とか、「ええ、ほんと」とかいう相槌になる。そうすると、「今、旅行中?」とか、「ここに住んでるの?」とか、会話の輪は回転を始める。
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