通常兵器による抑止力を強化せよ

執筆者:田中明彦 2009年5月号
エリア: アジア

 北朝鮮の「人工衛星」打ち上げは、失敗したようである。とはいえ、北朝鮮が弾道ミサイルの射程を着実に伸ばしていることは事実である。この状況をどう判断すべきか。 まず、これによって東アジアの核兵器や弾道ミサイルをめぐる状況が、質的に激変したわけではないことに注意する必要がある。なぜなら、今回の実験によっても、依然として北朝鮮がアメリカに対して核の第二撃能力を持つわけではないからである。したがって、アメリカが日本に差し掛けている「核の傘」、あるいはより広い意味での「拡大抑止」(第三国の軍事力によって自国への攻撃を抑止すること)の信頼性がただちに失われるわけではない。

カテゴリ: 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
田中明彦(たなかあきひこ) 1954年、埼玉県生まれ。東京大学教養学部卒業。マサチューセッツ工科大学大学院博士課程修了(Ph.D. 政治学)。東京大学東洋文化研究所教授、東京大学副学長、国際協力機構(JICA)理事長、政策研究大学院大学学長、三極委員会アジア太平洋地域議長などを経て、2022年4月より再び国際協力機構(JICA)理事長に就任。著書に『新しい「中世」―21世紀の世界システム』(サントリー学芸賞受賞)、『ワード・ポリティクス―グローバリゼーションの中の日本外交』(読売・吉野作造賞)、『アジアのなかの日本』、『ポスト・クライシスの世界―新多極時代を動かすパワー原理』など。
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