政権交代で「政」と「官」の関係はどう変わるか

執筆者:牧原出 2009年11月号
エリア: アジア

民主党政権が打ち出す新しい「政治主導」はどのように進んでいくのか。いくつかのターニング・ポイントと、その先に現れる日本の政治の変化を見透す。 三百八議席という総選挙での大勝は、民主党に対する官僚の抵抗力を失わせた。当面のところ、「政治主導」の政策形成が進みそうに見える。ここでは、民主党政権が四年後に総選挙が行なわれるまで続くことを一応の前提とした上で、新しい「政治主導」がどのような形を取るのか、見透してみたい。 歴史を振り返れば、自民党は、結党以来少しずつ官僚から政策形成のイニシアチヴを奪ってきた。戦時体制のもとで成立した官僚制内の確固たる政策決定手続に、自民党政務調査会が少しずつ介入していく。たとえば、政府の審議会と並行して、党政調会特別委員会や部会が案件を検討し、政府よりも先に決定を出すことで、政府の審議会に党の決定を織り込ませるといった手続を制度化させた。その結果、一九八〇年代には、官僚は与党の了解を慎重に取った上で、政策を立案するようになる。当時はこれこそが「政治主導」といわれたのである。

カテゴリ: 政治
フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
執筆者プロフィール
牧原出(まきはらいずる) 東京大学先端科学技術研究センター教授。愛知県生まれ。東京大学法学部を卒業後、東北大学法学部助教授、同大学大学院法学研究科教授等を経て、2013年4月より現職。専門は政治学・行政学。著書に、『内閣政治と「大蔵省支配」ー政治主導の条件』(中公叢書、2003)、『行政改革と調整のシステム』(東京大学出版会 、2009)、『権力移行 ー何が政治を安定させるのか』(NHKブックス 、2013)、『「安倍一強」の謎』(朝日新書 、2016)、『崩れる政治を立て直すー21世紀の日本行政改革論』(講談社現代新書、2018)、『田中耕太郎ー闘う司法の確立者、世界法の探求者』(中公新書、2022)他多数。
  • 24時間
  • 1週間
  • f
back to top