二〇〇八年、内閣府は「子どもと家族を応援する日本」の内閣総理大臣表彰を企業四社に与えた。選定委員の一人だった筆者が印象深く感じたのは、四社のうち最も企業規模が小さい長岡塗装店(島根県松江市)の取組みだ。同社の成功は、地方の中小企業を勇気づけると思うので、紹介したい。 十数年前、同社は、いわゆる「3K」と揶揄される業種特性もあって、人材の確保・定着はとても深刻な課題だった。一人前の塗装職人になるまでには長い訓練期間が必要だが、若年従業員の多くは資格を取得することなく離職していく状況だった。事務職の女性従業員の中には、妊娠・出産・介護といった事情により、時間的な制約に悩む者もいた。

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