無罪判決で復活した「サルコジのライバル」

執筆者:国末憲人 2010年3月号
エリア: ヨーロッパ

[パリ発]フランス国民の前に再び戻って来ると、どれだけの人が思い描いただろうか。仏政財界を巻き込んだ「クリアストリーム疑惑」で虚偽告発などの罪に問われ、執行猶予付き禁固一年六カ月と四万五千ユーロの罰金を求刑されていたドミニク・ドビルパン前首相(五六)である。一月二十八日、パリ軽罪裁判所で無罪判決を勝ち取った。 シラク前大統領の腹心として事務方に徹してきたドビルパン氏は、シラク政権二期目で抜擢された外相在任時、フランスと世界に自らを強く印象づけた。米ブッシュ政権のイラク攻撃を制止する外交キャンペーンを主導し、二〇〇三年二月の国連安保理では米英を牽制して「私たちは理想の守り手、良心の守り手だ」と大見得を切り、満場の拍手に迎えられた。〇五年には首相に就任し、シラク氏の後継の立場をサルコジ氏と争うほどの地位に駆け上がった。

カテゴリ: 経済・ビジネス
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執筆者プロフィール
国末憲人(くにすえのりと) 東京大学先端科学技術研究センター特任教授 1963年岡山県生まれ。85年大阪大学卒業。87年パリ第2大学新聞研究所を中退し朝日新聞社に入社。パリ支局長、論説委員、GLOBE編集長、朝日新聞ヨーロッパ総局長などを歴任した。2024年1月より現職。著書に『ロシア・ウクライナ戦争 近景と遠景』(岩波書店)、『ポピュリズム化する世界』(プレジデント社)、『自爆テロリストの正体』『サルコジ』『ミシュラン 三つ星と世界戦略』(いずれも新潮社)、『イラク戦争の深淵』『ポピュリズムに蝕まれるフランス』『巨大「実験国家」EUは生き残れるのか?』(いずれも草思社)、『ユネスコ「無形文化遺産」』(平凡社)、『テロリストの誕生 イスラム過激派テロの虚像と実像』(草思社)など多数。
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