二月二十六日、公明党の支持母体である創価学会の秋谷栄之助最高指導会議議長が民主党の小沢一郎幹事長、輿石東参院議員会長と東京・紀尾井町のホテルニューオータニで会談した。
会談は秘密裏に開催されたかのように報じられているが、実はそうではない。会談が始まる前からホテルのロビー周辺には、多くのマスコミ政治部記者がうろつき、会談の現場を押さえようと血眼になっていた。つまり、会談があるという情報は、事前に漏洩していたのだ。そもそも国会議事堂からほど近いこのホテルは、政界関係者やマスコミの目を避けて誰かと会うには不向きであり、この会談は、あえて見せるために開かれた可能性がある。民主党の「反小沢系」議員の一人は、「会談は、民主、公明両党の蜜月の始まりを学会信者や民主党支持者に知らしめるセレモニーの意味があった」と指摘している。
民公接近にみられるように、二月から三月にかけてこれまでの政界の枠組みを超えた新しい動きが広がりつつある。これは民主党の失速と関係がある。
鳩山内閣の政策的な迷走と民主党のトップ二人を巻き込んだ「政治とカネ」の問題で民主党は一時の勢いを急速に失いつつある。民主党にとって、さらに大きな衝撃だったのは、二月二十一日投開票の長崎県知事選など地方選挙での相次ぐ惨敗だった。昨夏の衆院選のような民主党の勢いは衰えたとは言っても、これまでは多くの政界関係者が、それでも今夏の参院選では民主党が勝つことを想定してきた。「支持率は落ちても、実際の選挙では民主党の方が自民党よりまだ強い」(親小沢系若手議員)とも言われてきた。だが、一連の地方選の結果は、支持率という統計上の数字だけでなく、実際に民主党が退潮傾向にあることを目に見える形で示した。多くの人が信じていた参院選での民主党の勝利はもはや確実なものではない。鳩山政権をめぐる政治情勢は大きく変化したのだ。
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