饗宴外交の舞台裏 (39)

独仏融和の象徴はアルザス料理

執筆者:西川恵 2001年3月号
エリア: ヨーロッパ

 フランスのシラク大統領とドイツのシュレーダー首相の夕食会を兼ねた非公式会談が一月三十一日夜、ドイツ国境に近いフランス東北部アルザス地方のブレシュハイムでもたれた。中心都市ストラスブールの近くにある人口千人の小さな町で、会場にあてられたのは家族経営の気のおけないレストラン「シェ・フィリップ」だった。「小さな町で警備がし易い上に、空港から七キロと地の利がよく、日帰りしなければならない両首脳にとっても便利でした」とエリゼ宮の担当者。そうした便宜的な理由はともかく、アルザス地方が首脳会談の場所に選ばれたのにはそれなりの訳がある。

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執筆者プロフィール
西川恵(にしかわめぐみ) 毎日新聞客員編集委員。日本交通文化協会常任理事。1947年長崎県生れ。テヘラン、パリ、ローマの各支局長、外信部長、専門編集委員を経て、2014年から客員編集委員。2009年、フランス国家功労勲章シュヴァリエ受章。著書に『皇室はなぜ世界で尊敬されるのか』(新潮新書)、『エリゼ宮の食卓』(新潮社、サントリー学芸賞)、『ワインと外交』(新潮新書)、『饗宴外交 ワインと料理で世界はまわる』(世界文化社)、『知られざる皇室外交』(角川書店)、『国際政治のゼロ年代』(毎日新聞社)、訳書に『超大国アメリカの文化力』(岩波書店、共訳)などがある。
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