ハノイでの田中真紀子外相と唐家セン外相の日中外相会談(七月二十四日)は、中国からの申し入れで通訳を介さず、日本語で行なうという極めて異例のものだった。唐外相は日本語が堪能だが、正式の会談を一方の国の言葉で通すというのは、外交上、あまり聞いたことがない。加えて歴史的に難しい関係にある日中両国である。日本語での会談は大きな冒険だった。 会談を日本語で行なった中国側の意図について、日本のマスコミは「会談時間を有効に使いたかったためではないか」と指摘したが、日中を取り巻く状況を考えれば、それだけの理由で日本語になったとは考えにくい。

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